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少子化解消慈業
少子化解消慈業
少子化は、治安や防衛、企業活動など社会機能や国力の維持に大きな影響を与えることから、「静かなる有事」とも呼ばれています。現に自衛官は定員を割っており、企業活動でも深刻な人手不足に陥っております。
令和5年(2023年)の出生数は72万人台、合計特殊出生率は1.20とともに過去最低を更新しました。昭和48年(1973年)の第二次ベビーブームでは、209万人、合計特殊出生率は、2.1台となっております。この50年で出生数が65.6%減少しており、このままの水準で行くと日本という国を維持することが難しい状況にあります。
政府も平成元年(1989年)以降、累計62兆円の予算を使って少子化対策をしてきましたが、功を奏していると言える状態ではありません。これまでの政府の政策は、少子化対策というよりも子育て支援に焦点が当てられている政策を充実させてきました。
しかし、令和2年(2020年)5月29日に閣議決定された「少子化社会対策大綱」で、少子化の主な原因は、未婚化・晩婚化と、有配偶出生率の低下と指摘している通り、結婚が最も大きい原因であると指摘しています。
未婚化・晩婚化の要因は人それぞれであることから一概には申し上げられませんが、結婚するにあたっての特に男性の経済的要因、そもそも結婚相手と出会う出会いの要因、結婚後の住まいの問題と三つに大別することができます。
今回は、未婚化・晩婚化のうち、晩婚化に焦点を絞ってご説明いたします。
以下の表はコーホート出生率という表です。
この表は、表上部に生まれた女性が何歳で何人出産したか、という表です。例えば1955-59年生まれの女性が25-29歳に0.92人の子どもを産み、49歳までに累計1.94人産んだというように見る表です。緑色のタイルは生まれ年の女性が左の列の年齢に達していないことを意味します。
このうち着目するのが1965-69年の前のうすだいだい色のタイルのほとんどが30代前半で平均を上回っているのに対して、1970-74年生まれ以降は、30代前半以降で平均を上回るうすだいだい色となっております。両方とも7つタイルがあり、1965-69年生まれ以前のうすだいだい色のタイルの合計は、3.73となっている一方、1970-74年生まれ以降のうすだいだい色のタイルの合計は、1.71となっており、54.2%、つまり半分以上少なくなっています。1970-74年以降に生まれた人は早く結婚して出産を手控えていたというわけではなく、そもそも晩婚であったため、出産する人数が減少していることを意味します。
では、どうして晩婚化が進んでいるのでしょうか。一つ目が経済的、特に男性の経済的要因です。
その前に、これからしばしば相関係数という言葉を使います。
相関係数とは2つの物事の数値がどれだけ関係しているのかについて-1から1の間で表すものです。1が全くの比例、-1が全くの逆比例、0に近づけば近づくほど相互にあまり関係がないという指標です。
その数字の絶対値の大きさで以下の表のことが統計的に言えるというものです。
これを踏まえて、以下の表が男性の実質賃金と男女の平均初婚年齢です。
実質賃金とは、労働者が実際に受け取った給与(名目賃金)から、消費者物価指数に基づく物価変動の影響を差し引いた指数です。つまり物価の影響を受けた実質使えるお金の賃金が実質賃金ということになります。
この男性の実質賃金と男性の初婚年齢との相関係数は-0.924、女性の初婚年齢との相関係数は、-0.887となり、男女とも男性の実質賃金が下がったため、初婚年齢が逆比例して上がったと言えます。
逆を言えば、実質賃金が上がれば晩婚化は防げるということになります。
ではどうすれば、実質賃金を上げることができるのか、弊社では中長期的視点と短期的視点の2つのプロセスを用意しております。
大学発ベンチャーでは中長期的視点に立って、特に地方の大学・短大・高専・研究機関の研究成果を商用化することによって産業を創出します。
一方で、福利厚生賃貸は導入直後から実質賃金を上げることができます。
しかし、結婚する相手がいなければ、いくら実質賃金を上げても意味がありません。
では、結婚相手はいるのでしょうか。結婚していない20代30代の男女になぜ結婚しないのかを尋ねると、以下の表のような回答となりました。
こちらの表は令和元年少子化白書の表ですが、端的に言えば結論相手がいないと回答している割合が3割を超えており、経済的理由に次いで多くなっていました。
では、こうした結婚相手のいない方は相手を探すために何かしているのでしょうか。
結論から言うと年齢・性別にもよりますが、6割前後が何もしていないという回答でした。(国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」)
では、結婚したくないのでしょうか。
以下の表は、未婚の女性に対して理想と実際になりそうな人生を上げてもらっていますが、結婚しないことを理想とする女性は6%に過ぎず、逆に実際なりそうな人生として、結婚できない人生になりそうだとしている方が21%います。
結婚はしたいがなぜか何もしていない方が6割前後いるということになります。
では、どうして何もしないのでしょうか。
少々話は脱線しますが、自分自身への満足と将来イメージへのポジティブさを調査した内閣府「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」(2018年度)によると、以下の通りの結果となっております。
質問の内容としては、「あなたは40歳ぐらいになったときどのようになっていますか」という質問に対する回答が以下の通りです。
また、自分に対して満足している人は、早く結婚して自分の家庭を持ちたいと考えている人が、自分に満足していない人に比べて割合が高くなっています。
では、いつからそんなに日本人は自分自身に満足しなくなったのでしょうか。
内閣府平成25年度版「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」によると、以下の表のとおり、日本の高校生は諸外国に比べて圧倒的に自分自身へ満足していないことが分かります。
問:自分自身へ満足しているか(対象:高校生)
ここからは、明確な数値で出せるものではないのであくまでも推測となってしまいますが、自分自身へ満足している人が早く結婚したいとしている以上、自分自身の自信のなさが結婚に対して何もしない、という選択肢になっているのではないかと推測できます。
では、高校生含め、自分自身に満足していない人をどうやったら満足させることができるのでしょうか。
そこで行っているのがメンター制度です。
メンターとは、一般的に他者の成長と発展を支援する役割を担う人物で、メンターは通常、特定の分野や職業において経験や知識が豊富な人で、メンティ(指導を受ける側)に対して、キャリアのアドバイス、スキルの向上、個人的な成長をサポートする人を指します。
最後に結婚後の住まいについてです。
これはあるニュースソースを抜粋したものです。
55平方メートルの2LDK賃貸マンションに住んでいますが、リビングのソファを動かして遊ぶスペースを確保するのが精一杯で、将来的に手狭になることを懸念。3LDKの物件を探したものの、都内では購入価格が1億円を超え、賃貸も月々10万円近く家賃が上がるため決断できずにいます。
近年、東京都心では円安の影響で海外投資家による物件購入が増加し、不動産価格が急騰。その結果、住宅購入を諦めた子育て世帯が賃貸市場に流れ、ファミリー向け物件の家賃も大幅に値上がりしています。
夫妻Aのように、都心での住まい選びに苦労する家庭は少なくありません。
一方、広い住まいを求めて東京近郊に移住する「脱・東京」の動きも広がっています。神奈川県に移住した夫妻Bは、広いマンションを購入し、子育て環境は改善されたものの、通勤時間が片道20分から1時間に延び、仕事や育児、家事に充てる時間が大幅に減少。
特に子どもが体調を崩した際の対応が難しく、病児保育の予約が取りづらいため、高額な民間施設を利用することも多く、予想以上の出費に悩んでいます。また、保育料の違いなどもあり、夫婦で東京に戻るべきか検討しています。
令和5年、東京都の合計特殊出生率はついに1を切り、0.99となりました。一人の母から一人以下の子どもしか生まれないということです。
購入を含めた家賃と通勤時間はトレードオフの関係にあり、特に首都圏ではニュースソースの通り、子育てがしにくい環境となっております。
では、どうして子育て、生活のしにくい大都市部に人口は流入するのでしょうか。
日本は2008年をピークに人口が減少しており、人口が増えている都道府県は東京都と沖縄県のみです。2008年をさかのぼって1950年から人口減少前の2005年において、三大都市圏(首都圏(東京・千葉・埼玉・神奈川)、関西圏(大阪・京都・兵庫)、中京圏(愛知・岐阜・三重))には人口は流入しているものの、それ以外の地域は全て人口が流出していました。その理由は所得との相関が0.836となっており、相関係数を2乗するとその物事の理由となるため、70.0%の方が所得の高さを理由に三大都市圏へと移り住んでいたことになります。
東京都は一人当たりの所得が唯一500万円を超えており、それ以外の道府県は300万円台以下となっております。つまり、所得が高いがために首都圏へ移住していることになります。
日本国憲法には移動の自由が保障されており、自由意思に基づく移動を誰も止めることはできません。しかし、移動の理由が所得の高さである以上、地方部でも東京都並みの所得の高さを実現できれば、地方から首都圏への移動を食い止めることができると考えられます。
そこで活用できるのが前出の大学発ベンチャープラットフォームです。地方部で付加価値の高い財やサービスを提供することで、地域産業を振興し、高い実質賃金を得ることができるようにすれば、地方部から首都圏へ移動する理由の大きな一つはなくなります。
また、政治的な話とはなりますが、東京一極集中を是正するためには、政治的判断が必要となります。皇居、国会、首相官邸、最高裁判所、日本銀行本店などは東京に置いておく必要がありますが、財務省・外務省・防衛省・内閣府以外の省庁は霞が関においておく蓋然性はなく、地方に分散させたり、政治的に大企業の本社機能を首都圏外に移させるなどにより、政府は積極的に東京一極集中の是正を図る必要があります。
東京を弱体化させると東京マーケットへの投資に影響が出るため、適度なバランスが必要ですが、静かなる有事を解消するためには、大胆な改革が必要です。
さて、現在の日本は「人口オーナス期」と呼ばれる時期であります。
人口オーナス期は、高齢化が進んだ社会において生産年齢人口(労働力人口)が減少し、それに伴い非生産年齢層(主に高齢者)の割合が増加する時期を指します。この期間中、労働力不足が進行し、社会保障負担が重くなるため、経済的な負担が増大します。
これに対して「人口ボーナス期」という言葉があります。人口ボーナス期は、生産年齢層(通常15歳から64歳)が非生産年齢層(15歳未満および65歳以上)に対して数的に優勢となる時期のことを指します。この時期には、労働力が豊富で経済が成長しやすい状態にあるため、国や地域の経済発展にとって大きなチャンスとされています。
特に、子供と高齢者の割合が低く、生産年齢層が社会の大部分を占めることから、社会保障負担が相対的に軽減され、経済的にも人口的にも恩恵を享受しやすくなります。
つまり少子化対策というのは最大の経済対策でもあるのです。政府は2030年代までが少子化トレンド反転のラストチャンスとしています。時間との戦いです。時間切れになったら、日本は再び浮き上がることができない、そうした世代であり、逆にそれを救うことができるのが私たちだけなのです。